「厚生労働省」HPより。果たして数字に忖度はあったのか……
 

 霞が関が発表する「経済統計」にまで「忖度」が働いているのではないか――。エコノミストや経済記者の間でそんな「疑念」が広がっている。

実態より大幅に上ブレ

 焦点になっているのは、厚生労働省が毎月発表している「毎月勤労統計調査」。全国約3万3000の事業所から賃金や労働時間などのデータを取得、統計としてまとめている。最も代表的な賃金関連の統計だ。

 その「毎月勤労統計調査」の「現金給与総額」の対前年同月比増加率が、統計手法の見直しの結果、実態より大幅に上ブレしているというのだ。今年に入って調査対象となる事業所群を新たな手法で入れ替え、調査対象の半数弱が入れ替わったにもかかわらず、補正調整も行っていない。統計では、現金給与総額の伸びは5月は2.1%増、6月は3.3%増と高い伸びを示しており、安倍晋三首相が言い続けてきた「経済好循環」による賃金上昇がいよいよ本格的に始まったか、という期待を持たせた。

 現金給与総額に着目してきたエコノミストの間から、6月の3.3%増という高い伸びについて疑問視する声が上がり、実際には、統計手法の見直しの影響が大きいことが明らかになった。厚生労働省が「継続標本」による前年同月比の動きとして公表したデータの、入れ替えた事業所以外の共通のサンプルで比較した「参考値」では、5月は0.3%増、6月は1.3%増だったのだ。

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