統計数字も「忖度」好調過ぎる「現金給与」のからくり

執筆者:磯山友幸 2018年11月5日
エリア: アジア
「厚生労働省」HPより。果たして数字に忖度はあったのか……
 

 霞が関が発表する「経済統計」にまで「忖度」が働いているのではないか――。エコノミストや経済記者の間でそんな「疑念」が広がっている。

実態より大幅に上ブレ

 焦点になっているのは、厚生労働省が毎月発表している「毎月勤労統計調査」。全国約3万3000の事業所から賃金や労働時間などのデータを取得、統計としてまとめている。最も代表的な賃金関連の統計だ。

 その「毎月勤労統計調査」の「現金給与総額」の対前年同月比増加率が、統計手法の見直しの結果、実態より大幅に上ブレしているというのだ。今年に入って調査対象となる事業所群を新たな手法で入れ替え、調査対象の半数弱が入れ替わったにもかかわらず、補正調整も行っていない。統計では、現金給与総額の伸びは5月は2.1%増、6月は3.3%増と高い伸びを示しており、安倍晋三首相が言い続けてきた「経済好循環」による賃金上昇がいよいよ本格的に始まったか、という期待を持たせた。

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執筆者プロフィール
磯山友幸(いそやまともゆき) 1962年生れ。早稲田大学政治経済学部卒。87年日本経済新聞社に入社し、大阪証券部、東京証券部、「日経ビジネス」などで記者。その後、チューリヒ支局長、フランクフルト支局長、東京証券部次長、「日経ビジネス」副編集長、編集委員などを務める。現在はフリーの経済ジャーナリスト活動とともに、千葉商科大学教授も務める。著書に『2022年、「働き方」はこうなる』 (PHPビジネス新書)、『国際会計基準戦争 完結編』、『ブランド王国スイスの秘密』(以上、日経BP社)、共著に『株主の反乱』(日本経済新聞社)、『破天荒弁護士クボリ伝』(日経BP社)、編著書に『ビジネス弁護士大全』(日経BP社)、『「理」と「情」の狭間――大塚家具から考えるコーポレートガバナンス』(日経BP社)などがある。
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