
兵庫県西宮市の阪急夙川(しゅくがわ)駅から甲陽園駅に向かう支線「阪急甲陽線」沿線は、関西でも指折りの高級住宅街だ。山沿いには関西学院大学をはじめ多くの学校が点在し、文教地区であることも住宅地としての価値を高めてきた。
そんな甲陽線沿いの神園町の道路信号にあった「夙川学院前」という標識が消えたのは1年ほど前のことだ。かつて、ここには夙川学院高校・中学校の広大なキャンパスが広がっていたが、今は総戸数353戸の「ヴェレーナシティ夙川パークナード」など高級マンション・住宅に姿を変えた。
夙川学院は数々の不祥事の末に資金繰りが行き詰まり、キャンパスを移転、2019年には高校、中学ともに他の学校法人の手に渡った。神園町のキャンパスは売却され、高級マンション群へと姿を変えたわけだ。今、その一角には「認定こども園」があるが、規模を縮小して短大とこども園だけを持つ学校法人になり、神戸市長田区に移転した「夙川学院」が今も経営する。
再び注目された「かつての不祥事」
その夙川学院が久しぶりに私学関係者の話題に上った。2023年末に学院のホームページに「重要なお知らせ」という一文を載せたのだ。2021年当時の理事・法人事務局長が法人の預金口座から合計853万9779円の使徒不明の金を引き出していたという内容だった。出金分はすでに回収したとされていたが、2024年1月には私学助成金が10%カットされる処分を受けた。その際出された増谷昇理事長名の文書には「引き続きガバナンス体制の強化に取り組む所存です」と書かれていた。
私学関係者がそれほど大きいとは思えないトラブルに関心を持つのは、かつて、学院の校地を失うことになった不祥事の始まりに酷似しているからだった。……

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