さて日本はどう対応したらよいのか(C)時事

 

 今、習近平国家主席による政権は、「3つの罠」に直面していると考えます。1つは「中所得国の罠」、2つ目が「タキトゥスの罠」、そして3つ目が「トゥキディデスの罠」です。

 まず「中所得国の罠」ですが、これは誰が最初に言い出したかというと、世界銀行です。国際復興開発銀行と世界銀行の研究報告書をまとめた『東アジアの奇跡』(1994年、東洋経済新報社)という本がありまして、そこで指摘されていることです。

 と言うのは、やはり人件費の安い頃はそれを生かし、人口ボーナスもあってどんどん産業を発展させ、経済も発展する。ただし、人件費が徐々に上昇すると、新興国は技術力で弱いため先進国に追いつかない。そのハードルにぶつかるため、徐々に成長が停滞していくという命題がある。つまり、この「中所得国の罠」に、今の中国も当てはまっているのではないかという議論が出てきているのです。

 想定されているのは、1人当たり国内総生産(GDP)がだいたい1万ドルを少し超えたところで停滞していく。2008年北京オリンピック、2010年上海万博があって、さらに人民元の切り上げもあるので、1人当たりGDPというのはドル建てで計算されるものですから、急速に拡大している。ただ、これからどうなるかというのは、今申し上げた技術力を上げることができれば、さらに成長して先進国に仲間入りできるが、さもなければ、多分停滞する可能性もあると。実際、どうなるかというのはこれからの政策次第、中国人がどこまで努力するかでしょう。

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