「極右」大統領誕生「ブラジル」の行方

執筆者:遅野井茂雄2018年11月6日
ブラジル大統領選に勝利したボルソナロ氏だが、その行く手は……(C)AFP=時事

 

 10月28日に行われたブラジル大統領選挙決選投票で、過激な言動で物議を醸し「ブラジルのトランプ」と呼ばれた極右のジャイル・ボルソナロ候補が、事前調査の予測通り、10%の差をつけて左派「労働党」(PT)のフェルナンド・アダジ候補を下し勝利した。

 中南米の「メガ選挙年」の最後を飾ったブラジルの大統領選挙は、既存の政治や政党に対する有権者の拒絶によって政治地図が激変したメキシコなどでの政変に通底するものを含んでおり、ブラジルの内政外交に転換をもたらすことが予想される。

既成政治への絶望感

 今回の選挙結果は、何よりも汚職にまみれ、経済や治安悪化になす術のない既成政治に対する絶望的ともいうべき不信感や怒りの表れであった。1回目の投票でボルソナロ氏の得票率が事前予想をはるかに超え、46%に達していたことがそのことを如実に物語っていた。

 ブラジル経済は、2015年、16年と連続で年率マイナス3~4%の成長に沈んだ後も低迷にあえぎ、失業率は2桁に悪化(2017年13%、若年層は28%)。治安情勢は殺人件数が年間6万人を超す(同年6万3880人)最悪の状況で、社会は組織暴力の増大に怯えていた。そして極めつけが、国営石油公社や大手建設会社による多数の政治家を巻き込んだ史上最大の汚職スキャンダルだった。

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