韓国大法院「元徴用工」判決の深刻度(下)

執筆者:平井久志2018年11月7日
10月30日、河野太郎外相(左端)は李洙勲駐日韓国大使(右端)を外務省に呼び、抗議した (C)時事

 

 韓国における請求権協定の除外対象は、慰安婦問題、サハリン残留韓国人、在韓被爆者ということで整理できたと見られていたが、これを変えたのが2012年5月の大法院(日本の最高裁判所に該当)判決であった。

 日本のメディアの中には、この判決が盧武鉉(ノ・ムヒョン)政権時代に任命された左派系判事によるものだ、という報道もあるが、これは少し的外れだろう。当時はむしろ保守系裁判官たちが多数派であった。韓国では、政治が救済できないものを司法が救済するということが多い。影響を与えたのはむしろ、2011年8月の憲法裁判所の決定であろう。

流れを変えた2012年の大法院判決

 合憲、違憲を専門に扱う、大法院とは別の司法機関である憲法裁判所は2011年8月、元慰安婦の人たちが、韓国政府が日韓請求権協定と関連した紛争を解決するための努力をつくさなかった不作為により基本権を侵害されたとして、国を相手に出した憲法訴訟審判事件で、韓国政府が慰安婦問題の解決のために具体的な努力をつくさないのは憲法に反するという決定を下した。裁判官9人のうち6人が違憲、3人が却下という判断だった。

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