デュシャンの「便器」を利休の「花入」が迎え討つ「美の競演」

執筆者:フォーサイト編集部2018年11月15日
いざ「思索の旅」へ

 仏像や浮世絵でお馴染みの東京国立博物館にあって何やら異彩を放っているオレンジ色のポスター。「共通点は?」という見出しの下に「竹」と「便器」が並んでいる。はて、何のことやら。

 そう思った瞬間から、いつもと違う「鑑賞」のはじまりだ。一般に「スゴイ」とされるものを見て感嘆するだけでは、能がない。「本当にスゴイの?」「どこが似てるの?」「そもそもコレって何ですか?」と、あれこれ考えを巡らす。視覚的体験を超えた思索の旅。

 それが同館で開催されている特別展「マルセル・デュシャンと日本美術」(12月9日まで)の醍醐味である。

衝撃をもたらした「白い便器」

 百聞は一見に如かず。先ずは本展の主役、マルセル・デュシャン(1887~1968)の代名詞をご覧いただきたい。

突如現れる《泉》(レプリカ)。先ずは構えず気楽に見てみよう。撮影:広瀬達郎

 ポスターの白い便器に《泉》というタイトルがついている。思わず笑ってしまうネーミングだが、パカッと割れて中からホンモノの作品が――という展開を期待しても何も起こらないし、「現代社会の矛盾」とかいう便器以外の何かのメタファーになっているのでもない。眉間に皺を寄せていくら眺めても、見たままの作品だ。

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