黒田日銀総裁「出口戦略」地ならしで「豹変」

執筆者:鷲尾香一2018年11月16日
問題発言を行った際の黒田総裁(C)時事

 

 黒田東彦・日本銀行総裁の発言が大きく変化し始めている。それは、さながら金融政策の正常化に向けて、「市場との対話」を始めるための“地ならし”を行っているかのようだ。

苦しい言い訳

 11月5日、名古屋で行われた経済界代表者との懇談での挨拶で、黒田総裁からとんでもない言葉が飛び出た。「かつてのように、デフレ克服のため、大規模な政策を思い切って実施することが最適な政策運営と判断された経済・物価情勢ではなくなっている」と述べたのだ。これに続く言葉として、「従って、現在行っている大規模な金融緩和政策を徐々に正常化していく」と言ったとしても、何の違和感もなかっただろう。もちろん、実際には言っていない。

 代わりに黒田総裁は、現状の物価情勢について、「すでにわが国は、『物価が持続的に下落する』という意味でのデフレではなくなっている」との見解を示している。その上で、「この5年間、わが国の経済ははっきりと改善した。企業収益は過去最高となり、雇用環境も大きく好転している。物価の面でも、デフレに苦しんでいた5年前に比べれば、着実に改善している」とした。そして、これに続いて冒頭の言葉が飛び出したのである。

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