著者:スティーブン・レビツキー、ダニエル・ジブラット 訳者:濱野大道 本体価格:2500円

 世界中で民主主義が後退しているという見方がある。

 政治社会学者であるラリー・ダイヤモンドによれば、2006年以降、新興諸国での民主主義の質の低下と安定性の動揺、権威主義の台頭といった現象が顕著にみられるようになったという。同じく政治学者のロベルト・フォアとヤシャ・モンクも、現在、世界中で非民主主義に分類される国家が増えていると指摘する。彼らによれば、安定的に民主主義が発展し、定着してきたと考えられている国家でさえ、民主主義国家で生活を送ることの意義を理解できず、権威主義体制に魅力を感じ、場合によっては民主的政府に代わり軍政が敷かれることさえ許容する人びとが増えているという。現代社会では、やはり民主主義が後退しつつあるのだろうか。

 この問いに対して、共にハーバード大学の政治学者で本書『民主主義の死に方――二極化する政治が招く独裁への道――』(新潮社)の著者であるスティーブン・レビツキーとダニエル・ジブラットが提示する回答は「否」である。だが、著者らは民主主義の後退は起きていないにせよ、民主主義の将来は決して楽観できる状況でもないとして警鐘を鳴らす。

記事全文を印刷するには、会員登録が必要になります。