日産の再建に乗り込んできた当時。コストは大胆にカットしたが、慎ましさはなかった(C)AFP=時事

 

 金融商品取引法違反(有価証券報告書の虚偽記載)容疑で東京地検特捜部に逮捕され、11月22日の臨時取締役会で解任された日産自動車前会長のカルロス・ゴーンは、周知の通りルノー会長、三菱自動車会長を兼ね、この業界に君臨してきた。しかし、彼が企業人としてのキャリアを築いたのは自動車業界ではなく、三つ星ガイドで知られるフランスのタイヤメーカー「ミシュラン」である。

 ゴーンは、このフランスきっての優良企業で出世頭となりながら、42歳の時に転身した。彼のその後の栄光と今回の転落につながる決断である。なぜ彼はその道を歩んだのか。そのままミシュランに残っていたらどうなっていたか。拙著『ミシュラン 三つ星と世界戦略』(新潮選書、2011年)の取材資料をもとに、彼の特性の一端を探ってみたい。

「チャンスをつかむ術を知る人物」

 カルロス・ゴーンは1954年、アマゾン川の支流に面したポルト=ヴェーリョで、レバノンから移住したキリスト教マロン派の家庭に生まれた。6歳からはレバノンでカトリック系の学校に通い、フランス語で教育を受けた。成績優秀で、渡仏してエリート校の理工科学校と国立高等鉱業学校に学び、1978年にミシュランからの誘いを受けて入社した。

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