逮捕直前、フランスでルノーの工場にマクロン大統領を案内してご機嫌だったが(C)AFP=時事

 

 カルロス・ゴーン日産自動車前会長の突如の逮捕、解任劇は、世界中のビジネス界へ激震を走らせた。この事件で筆者がもっとも心配するのは、世界が日本企業との提携に今後厳しい対応をしてくるのではないかという点だ。自動車業界に限らず、今回の事件は日本ビジネス界の多くの分野への禍根を残すことになりはしないか。日本的な「内向き志向」の行動様式に対する批判の増幅である。

 10年ほど前であるが、筆者はゴーンと直接話したことがある。日産・ルノーがパリで企画した国際学生ビジネスプロジェクト・コンペの席上だった。日米英仏印の学生が国際的共同プロジェクトを組織し、ビジネスモデルの優劣を競争する企画だった。確か最優秀賞は仏グランゼコール(大学より格上の専門学校)、インドの大学、それに東京大学の学生による共同プロジェクトであった。

 すでにこの種の国際イベントは世界では行われていたことなのであろうが、筆者には新鮮であったし、それを日本企業が先鞭をつけるように行っていたことを誇らしげに思い、そんな話をゴーンとした覚えがある。うっすらと笑みを浮かべる程度で、あの強面の表情をほとんど変えることなく、淡々とした話しぶりには威信のようなものを感じたし、俗に言う「目力(めぢから)」のある人物だという印象を強く持った。進取の気性と目力の2つをもつ押しの強い経営者という評判どおりの印象であったが、反面、日本的体質とは異なるこのような経営者がトップに立つことによって日本の代表的企業の再建が実現したことに、内心忸怩たる思いをしたことも事実だった。

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