FTの当該記事

 

 テヘランから横滑りで赴任した2度目のロンドン勤務から帰国し、出向先の石油開発会社に出社したのは2002年のゴールデンウィーク明けだった。

 それからどのくらい後だったのか、正確には記憶していないが、経営幹部との会合の場で驚かされたことがある。単に筆者が「無知」だっただけなのだが、経営幹部が「ようやく無借金経営になれた」と胸を張っていたのだ。

 筆者が驚いたのは、帰任直前に読んだ『フィナンシャル・タイムズ』(FT)の記事があったからだ。

 記憶では、同記事は「ロイヤル・ダッチ・シェル」(以下シェル)の株価が大きく下落した、2002年第1四半期の決算が発表されたが、同社の負債比率が低すぎる、これは経営陣がチャレンジ精神を失っている表れだ、と市場が評価したからだ、と報じていたのだ。

 欧州では、借金が少なすぎるのはチャレンジ精神の欠如の表れ、と指弾されるが、日本では、今でも「無借金経営」は企業経営の健全性の表れとして高く評価されている。件の経営幹部は、当然のことながら「中興の祖」と高く評価されていた。

 このように、日本と欧米の企業を取り巻く環境は大きく異なっている。

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