五輪後の中国経済を待つ「滝壺転落」の懸念

執筆者:新田賢吾2008年10月号

オリンピック後の一時的落ち込みは日韓も経験した。だが、中国は高度成長そのもののピークと五輪が重なり、矛盾の一気噴出も――。 中国の宿願だった北京オリンピックが無事閉幕した。事前のチベット自治区での騒乱、新疆ウイグル自治区でのテロや開会式での「口パク」やCG花火の偽装、大会期間中の北京市内での度を越した規制など「問題のデパート」の観もある五輪だったが、中国がやり遂げたことは紛れもない事実だ。一九六四年の東京五輪、一九八八年のソウル五輪を経た日本、韓国は、五輪直後の一時的な落ち込みはあったものの、経済力を一段と増し、政治、社会も成熟化した。五輪は幅広い意味で両国にとって登竜門だった。 では、中国も日韓のたどった道筋を歩み、一段と発展して、先進国に向かうのか。その可能性は決して低くはないだろう。だが、日韓とは比較にならないほど、困難な道のりになるのは間違いない。すでにその兆しは現れている。 中国経済を牽引してきた輸出の減速は、この数カ月繰り返し指摘されている。だが、その落ち込みの深刻さはまだはっきりとは見えてこない。表面的には前年同月比でプラスを維持しているからだ。中国の八月の輸出額は千三百四十八億ドルと、前年同月比で二一・一%増となった。

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