「嫌米」だが「親中」ではない「ドゥテルテ比大統領」の戦略
2018年12月6日
フィリピンのロドリゴ・ドゥテルテ大統領は11月20、21の両日、首都マニラに中国の習近平国家主席を招き入れ、首脳会談では南シナ海における石油・天然ガスの共同開発や、鉄道などフィリピンのインフラ整備、中国の広域経済圏構想「一帯一路」で協力することで合意した。
2016年6月の就任から約2年半が経過したドゥテルテ大統領は、南シナ海の領有権問題を「封印」「棚上げ」し、経済、外交、安全保障の軸足を、長年の同盟国である米国から中国に移す「ピボット(旋回)戦略」を、いっそう強く推し進めている。ドゥテルテ大統領の真意と狙い、フィリピンの事情を探ってみたい。
拭いがたい嫌米感情
一部メディアには、ドゥテルテ大統領が中国と米国とを「両天秤にかけている」との論調が散見される。つまり、どっちに転んでもいいように二股をかけていると言うのだが、むしろ理想と現実とを両天秤にかけているとみた方が、実態に即しているだろう。
ドゥテルテ大統領が思い描く理想とは、軍事的にも経済的にも米国に依存しないフィリピンである。これについては、ドゥテルテ大統領自身が就任当初、米国と「決別する」と言い放ったことで衝撃を与えたが、その思いは今なお、彼の本音であり理想なのだという。その根底にあるのはやはり、ドゥテルテ大統領にこびり付いた拭いがたい嫌米感情である。
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