8月号に続き10月号でも清官戯を特集(筆者提供)

 

 雑誌『中國京劇』(中華人民共和国文化和旅游部主管)の特集記事から今年の京劇界の動きを概観すると、例年とは違った雰囲気が感じられる。それというのも、2月号の『陳廷敬』、8月号の『手鏡』に続いて10月号でも『貞觀盛事』という外題の新編歴史劇が特集として取り上げられ、創作経緯も含め詳細に論じられているからである。

 1970年代半ばの文化大革命末期から同誌の購読を続けているが、新編歴史劇が1年間に3回も、しかも政権トップとの関連で特集されたことなど記憶にない。しかも『陳廷敬』と『手鏡』は清代、『貞觀盛事』は唐代と時代背景は異なるものの、共に「清官戯」。

 つまり清廉・剛毅・廉直を貫き、相手が皇帝であっても理非曲直を説いて諫める「清官」を主人公に、彼の働きによって貪官汚吏が糾弾・追放され、政治の浄化が進んで官僚組織の改革が図られる、また諫言を素直に受け止めた明君の力によって安定した富強の時代が建設され、万民に平穏な社会が訪れる、というストーリーである。『陳廷敬』『手鏡』『貞觀盛事』というラインナップは偶然の一致とも思えない。

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