『中國京劇』が相次いで特集した「清官戯」の政治的意図

執筆者:樋泉克夫 2018年12月6日
エリア: アジア
8月号に続き10月号でも清官戯を特集(筆者提供)

 

 雑誌『中國京劇』(中華人民共和国文化和旅游部主管)の特集記事から今年の京劇界の動きを概観すると、例年とは違った雰囲気が感じられる。それというのも、2月号の『陳廷敬』、8月号の『手鏡』に続いて10月号でも『貞觀盛事』という外題の新編歴史劇が特集として取り上げられ、創作経緯も含め詳細に論じられているからである。

 1970年代半ばの文化大革命末期から同誌の購読を続けているが、新編歴史劇が1年間に3回も、しかも政権トップとの関連で特集されたことなど記憶にない。しかも『陳廷敬』と『手鏡』は清代、『貞觀盛事』は唐代と時代背景は異なるものの、共に「清官戯」。

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執筆者プロフィール
樋泉克夫(ひいずみかつお) 愛知県立大学名誉教授。1947年生れ。香港中文大学新亜研究所、中央大学大学院博士課程を経て、外務省専門調査員として在タイ日本大使館勤務(83―85年、88―92年)。98年から愛知県立大学教授を務め、2011年から2017年4月まで愛知大学教授。『「死体」が語る中国文化』(新潮選書)のほか、華僑・華人論、京劇史に関する著書・論文多数。
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