仏大統領夫妻主催の晩さん会であいさつされる皇太子さま。右はエマニュエル・マクロン大統領 (C)時事
 

 天皇、皇后の元侍従長だった渡辺允氏は、両陛下が皇太子、皇太子妃として最後の外国訪問となった1987年の訪米(10月3~10日)に外務省幹部として同行している。当時、渡辺氏は外務省大臣官房審議官で、出発前に上司から「国賓訪問のつもりでやってきてほしい」と言われたことを覚えている。当時、昭和天皇の衰えは誰の目にも明らかだった。次に皇太子、皇太子妃が外国訪問をするときは新しい天皇、皇后として国賓で迎えられるだろうから、その予行演習のつもりでやってきてほしい、との意味が込められていた。

リヨンを救った日本の蚕

 本年9月、徳仁皇太子がフランスを公式訪問した。2019年5月の新天皇即位を控え、皇太子として最後の外国訪問である。随員の中にはかつての渡辺氏のように「国賓訪問の予行演習」と思った人もいたかもしれないが、実際、フランスは国賓に等しい待遇で皇太子を迎えた。最近、入手した饗宴メニューから見てみよう。

 2018年は日仏両国が国交を結んで160周年。フランスで日本文化を紹介するイベント「ジャポニスム2018」が大々的に開かれる機会に合わせ、皇太子は9月7日に日本を出発し、14日までの8日間、フランスに滞在した。皇太子はまず第2の都市リヨンに入り、リヨンを中心に、そこから約100キロ圏内のブルゴーニュ地方とグルノーブルを回った。

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