「JIC」vs.「経産省」で露呈した「霞が関の本音」

執筆者:磯山友幸2018年12月14日
10 日、JICの民間役員が総退陣する異常事態に、記者会見を行った田中正明社長 (C)時事

 

 6年に及ぶ第2次以降の安倍晋三内閣で間違いなく最大の失策だろう。

 官民ファンドの「産業革新投資機構(JIC)」と経済産業省の対立が決定的となり、12月10日にJICの民間役員が総退陣する異常事態に陥った。取締役として残るのは経産省と財務省の出身者2人だけとなり、JICは空中分解の危機に直面している。

「手のひら返し」に怒り

 JIC設立の理念は、日本にイノベーションを起こすためのベンチャー投資などを行う「世界レベルの政府系リスクキャピタル投資機関を作る」というものだった。それに賛同した日本を代表する金融人や経営者、学者が経営陣として集まった。ところが発足後、政府の「手のひら返し」に直面、それに怒った田中正明社長ら民間取締役9人全員が辞表をたたきつけた。

 JICは前身の「産業革新機構」を引き継いだ組織だったが、経営危機に直面した大企業を救済するために使われてきた形を大きく転換し、リスクマネーを供給する世界的な投資機関へと脱皮するというのが、経産省の「建前」だった。これは2017年に経産省が設けた「第4次産業革命に向けたリスクマネー供給に関する研究会」の報告で示されたもので、報告では「日本の官民ファンドは、投資先企業の価値を高めてリターンを最大化することに加え、政策目標の達成により国富を増大させることも目的としている」とし、諸外国が持つ国有ファンド、いわゆるソブリン・ウェルス・ファンドを目指すとしていた。

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