記者会見で辞任の意向を表明したJICの田中正明社長 (C)時事
 

 日産自動車のカルロス・ゴーン前会長が逮捕されてから1カ月が経過した。アライアンスを組む日産と仏ルノーの間では、連合の主導権を巡る権力闘争が続いている。

 この間、日本ではもう1つの経済“事件”があった。官民ファンド、産業革新投資機構(JIC)の社長を含む民間出身取締役9人の辞任である。こちらはJICを牽引するはずだった民間経営陣と経済産業省のファンドに対する考え方の違いが争点である。

 一見無関係に見える2つの事件は、1本の糸で繋がっている。その糸をたぐっていくと、「日本は本当に資本主義国なのか」という根源的な問いに突き当たる。2つの事件を時系列で追い、「点と線」を結んでみよう。

「支配下に置きたい」という野望

〈2015年〉2014年、36歳の若さで経済相に就任したエマニュエル・マクロン氏の指示で、フランス政府はルノー株を買い増しし、「フロランジュ法(2年以上の長期保有株主の議決権を2倍にする法律)」の適用を狙った。オランド政権下で雇用問題に悩んでいたフランスは、自国での雇用を増やす狙いでルノー・日産連合の経営への介入を目論んだが、ルノーCEO(最高経営責任者)で日産会長でもあったゴーンの猛反発を受け、買い増した株を売却した

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