北京のカナダ大使館では警戒が強まっている (C) AFP=時事

 

「易経」では、末尾「9」の年は中国にとって何か大きなことが起きると言われている。30年前の1989年には、学生と市民が民主化を求める天安門事件が起きた。では2019年は中国でどんな出来事が起きるだろうか。

 筆者には、易経の知識もなければ、占いの能力もないが、2018年に起きた米中貿易戦争がすでに中国経済と中国社会に十分な影を落としていることは見て取れる。

毛沢東時代の「論理的飛躍」

 共産党中央委員会にもっとも近い学者たちは、習近平中国国家主席に忖度して、「中国は科学技術においてすでにアメリカを全面的に超越した」と豪語する。その代表的な1人は、清華大学の胡鞍鋼教授(経済学)である。国営放送『中国中央電視台』(CCTV)は、彼が「我が国はほんとうにすごい」と熱弁をふるうドキュメンタリー番組を制作し、ゴールデンタイムに放映した。こうした言論は指導者に迎合するほか、間違いなく人民を鼓舞する効果がある。

 振り返れば、1840年のアヘン戦争以来、中国は列強に侵略されつづけてきた。共産党が吹聴するナショナリズムの文脈でよく使われるのは、「国が弱ければ、侵略される」という論理である。これは戦前日本の富国強兵と同じ論理だ。だからこそ中国は強国復権を目指すと言い、強国復権の夢をみる指導者に迎合して、この言わば「超越論」が登場した。

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