頂点まで一気に駆け上がった頃の清新さは薄れたが、可能性はまだあるマクロン大統領 (C)AFP=時事

 

 ウィーンを拠点に活動するブルガリア人政治学者イワン・クラステフ(Ivan Krastev)は、欧州を代表する評論家としての評価を固めつつある。世界各地の古今の事例にスラブ的なブラックユーモアも交えて綴る文章や、洞察に満ちた警句ととぼけた笑いをちりばめたスピーチは、専門家以外の受けも上々である。特に、欧州型ポピュリズムを論じた2017年の著書『アフター・ヨーロッパ』は欧州各国語に翻訳され、翌年には邦訳(庄司克宏監訳、岩波書店)も出た。

 その彼は、『壊された民主主義 グローバル抵抗運動の政治』(Democracy Disrupted: The Politics of Global Protest、未邦訳)という本を、米ペンシルヴェニア大学出版から2014年に刊行している。2010年代前半に世界各地で盛り上がり、その後急速に忘れられた大衆運動――米国のオキュパイ・ウォールストリート、中東各国の「アラブの春」、ウクライナのマイダン革命、トルコのイスタンブール・タクシム広場から広がった反政府運動、ロシアやタイの反政府デモ――などを分析し、そのうちのかなりの運動の特徴が「指導者なき市民運動」にあり、「既存の代表制民主主義に対する反乱」だった、と結論づけている。

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