宗教対立にロシアのプーチン大統領とトルコのエルドアン大統領(右)それぞれの思惑が絡み合う (C)AFP=時事

 

 キリスト教3大宗派の1つ、東方正教会の権威であるコンスタンティノープル総主教庁が、年明け1月6日にウクライナの正教会の独立を正式に承認する。3世紀にわたりウクライナの教会を勢力下に置いてきたロシア正教会は、コンスタンティノープル総主教庁との関係断絶を宣言し、徹底抗戦の構えだ。宗教対立の裏では政治闘争が渦巻いている。

「地政学上の思惑」

 ウクライナの教会の独立を陰で支持した人物がいる。トルコのレジェップ・タイイップ・エルドアン大統領だ。独立承認阻止へ協力を求めたロシアの働きかけをエルドアン大統領はやんわり退けた。「宗教には干渉できない」。

 東ローマ帝国の国教として発展した東方正教会の中心地コンスタンティノープルは、現在のトルコのイスタンブールにあたる。イスラム色を全面に出して強権を振るうエルドアン大統領なら、コンスタンティノープル総主教庁に圧力を掛けられる立場にあった。

 起点は2018年4月。2014年からロシアの侵攻にさらされるウクライナのペトロ・ポロシェンコ大統領がトルコを訪問し、コンスタンティノープル総主教庁のトップ、バルソロメオス1世全地総主教に独立承認を請願した。ロシアに先回りしてエルドアン大統領にも会談で理解を求め、独立を容認するとの言質を取り付けていた。

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