「政策論理」で分かる「IWC脱退」の意義

執筆者:鈴木一人2019年1月8日
昨年9月、ブラジルで開催されたIWC総会。日本代表が出席するのは、これが最後となった (C)時事

 

 年の瀬も押し迫った2018年12月26日、政府は正式に国際捕鯨委員会(International Whaling Commission:IWC)を脱退することを発表した。この中で政府は、「条約に明記されている捕鯨産業の秩序ある発展という目的はおよそ顧みられることはなく、鯨類に対する異なる意見や立場が共存する可能性すらないことが、誠に残念ながら明らかとなりました」と述べ、IWCが本来あるべき機能を失い、別の国際機関へと変質したことを脱退の根拠に挙げている。

 このIWC脱退を巡っては、科学的根拠に基づく議論をしているのに聞く耳を持ってもらえず、動物愛護のイデオロギーを実現するための組織からは脱退して当然といった議論もある一方で、日本はルールに基づく国際秩序の担い手であり、すでにアメリカのドナルド・トランプ政権が次々と国際機関や国際的な約束から離脱して「リベラル国際秩序」が揺らぐ中、日本が同じようなことをすべきではない、という議論もあった。これらの議論にはいずれも一定の説得力があり、今回のIWC脱退も賛否が分かれるところである。

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