過去との「呼応」で描き出す「難民の現実」

映画『未来を乗り換えた男』監督インタビュー

執筆者:フォーサイト編集部2019年1月11日
マルセイユで、別人に「乗り換える」ことになってしまったゲオルク(右)。出会ったマリー(左)は、その別人の妻だった (C)Schramm Film

 

 地中海に面したフランス最大の港湾都市・マルセイユ。この街は、ファシストの猛威に追われて国外へ脱出しようとする人々であふれていた。激しく動きつつある歴史に翻弄される、男と女。その運命の行きつく先をスリリングに描き出した独仏合作映画『未来を乗り換えた男』(原題『TRANSIT』)が、1月12日から公開される(ヒューマントラストシネマ有楽町、新宿武蔵野館をはじめ全国順次公開)。

クリスティアン・ペッツォルト監督 (C)Schramm Film

 メガホンをとったのは、冷戦下の東ドイツを題材にしたベルリン国際映画祭銀熊賞受賞作『東ベルリンから来た女』(2012年)や、第2次世界大戦直後のユダヤ人を取り上げた『あの日のように抱きしめて』(2014年)といった歴史映画製作で知られる、ドイツの巨匠クリスティアン・ペッツォルト監督である。

 この作品は、ドイツ抵抗文学の代表作『第七の十字架』で著名な作家アンナ・ゼーガースが、自らの亡命体験を基にした小説『トランジット』(1944年発表)が原作。だが、ペッツォルト監督は設定を第2次世界大戦中の時代から、その現代のマルセイユへと大胆に変えている。なぜ舞台設定を変えたのか、そして作品に込めた思いは――ペッツォルト監督に聞いた。

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