反骨のアーティスト「アイ・ウェイウェイ」が寄り添う「難民の悲劇」

映画『ヒューマン・フロー 大地漂流』

執筆者:三潴末雄2019年1月11日
『ヒューマン・フロー 大地漂流』より。1月12日(土)よりシアター・イメージフォーラムほか全国順次公開  © 2017 Human Flow UG. All Rights Reserved.

 

 20世紀に入ってから消滅した国はたくさんある。また、国が崩壊した後に新しく誕生した国があるのも事実だ。世界は何度も地図を描き変えてきた。その歴史の変化の中で、いつも大量に発生しているのが「難民」である。

きれいな衣服とスマートフォン

 世界の難民問題を扱ったドキュメンタリー映画『ヒューマン・フロー 大地漂流』(監督アイ・ウェイウェイ)の冒頭のシーンは美しい叙事詩のようだ。青い海原を映し出したスクリーンには、白い鳥が飛翔して行く。遠くに見える船影。そして空に詩が重なる。

生きる権利が欲しい
跳ねるヒョウや
はじける種のような
持って生まれた権利が欲しい
トルコ詩人 ナーズム・ヒクメット(1902~1963年)

 ジャン=リュック・ゴダールの映画のような画面に思わず吸い寄せられる。白い鳥は国境を簡単に越えて飛び回ることができる自由の象徴だろうか。やがて遠くの船影が近づいて来る。どうやら難民を満載したゴムボートのようだ。

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