いわき市内の一軒家に看板を掲げる日本のエージェント「SND」(フェイスブックより)

 

 ブータン労働人材省が主導した日本留学制度「学び・稼ぐプログラム」への批判が、ブータン国内で噴出している。そのきっかけが、2018年12月に留学先の福岡市内で起きたソナム・トブゲイ君(亨年24)の「自殺」である(本稿「上」参照)。

 多額の借金を背負い入国する留学生は、何もブータン人に限った話ではない。ベトナムなどアジアの新興国から毎年万単位の流入が続く“偽装留学生”も同様だ。しかし、ブータン以外の国では問題になっていない。なぜ、ブータンだけで制度への批判が高まっているのか。

 理由は2つある。まず、プログラムを進めた労働人材省と留学斡旋ブローカー「ブータン・エンプロイメント・オーバーシーズ」(BEO)は、留学生たちを欺き、日本へと導いていた。彼らは日本語学校を卒業すれば、日本で大学院への進学や就職ができると信じ、プログラムに応募した。政府がプログラムを主導し、1社のブローカーが斡旋を独占するのも他国にはない特徴だ。

 そしてもう1つの理由が、ブータン人たちが“真っ当な”留学生であることだ。出稼ぎ目的の“偽装留学生”は、日本で待ち受ける生活の実態を知ったうえで、留学を装い来日する。しかしブータン人の場合は、借金こそ背負っていても勉強が目的の者が多い。しかもアルバイト漬けとなる生活について、十分な情報も与えられず来日している。だからなお、「騙された」との思いを募らせる。

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