1月17日、英原発建設計画の凍結を決め、記者会見する日立製作所の東原敏昭社長 (C)時事

 

 日立製作所が英国で進めている原子力発電所の建設計画を凍結した。日本の原子炉メーカーでは三菱重工業が2018年、トルコでの建設を断念しており、東芝を含めた日本メーカーによる新規の原発案件は事実上ゼロになる。3社は「新車を作らない自動車メーカー」のような状況に陥り、事業の継続は難しい。一方、国内54基の原発を廃炉するには半世紀以上の時間と数百兆円のコストがかかると見られるが「廃炉の担い手がいない」という大問題が発生する。

3兆円に膨らんだ総事業費

 「極めて厳しい状況にある」

 日立の中西宏明会長は2018年末、子会社のホライズン・ニュークリア・パワーが英国で進めている原発建設の見通しを語った。その後、『日本経済新聞』や『読売新聞』が「日立、英原発事業凍結」「3000億円の損失計上へ」と報じた。1月17日、日立は「(民間企業としての経済合理性の観点から)ホライズン・プロジェクトを凍結することを決定した」と発表した。

 事業の継続が困難になったのは、当初、1基5000億円、2基で1兆円程度と見ていた総事業費が3兆円にまで膨らんだからだ。日立単独で背負えるリスクの許容範囲を超えており、数年前から投資パートナーを探してきたが見つからず、最後は英政府に2兆円規模の支援を要請した。しかし英政府から満額回答は引き出せず、計画断念に追い込まれた。
日立はこれまでに同プロジェクトで調査費用などとして2960億円の資金を使っており、2019年3月期連結決算(国際会計基準)で特別損失として計上する。日立はリトアニアでも原発の受注を目指していたが2016年に断念。国内では2006年に完成した北陸電力志賀原発2号機を最後に新規の建設が途絶えている。

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