「原発大国」フランスの「医療現場」と「災害対策」最前線

執筆者:医療ガバナンス学会2019年1月23日
筆者が学んでいるフランスの医療機関(筆者提供、以下同)

 

【筆者:三枝裕美・長崎大学医歯薬学総合研究科 災害・被ばく医療科学共同専攻医科学、長崎腎病院 非常勤勤務】

 東日本大震災から7年が経過したが、浪江町や双葉町、大熊町、富岡町の一部地域は未だに帰宅困難地域と指定され、約3万3000人が福島県外に避難をしている。東京電力福島第1原子力発電所事故は多くの教訓を残したが、その1つが防災・減災の重要性である。常日頃から準備をしていれば、いざというときに心配することはないが、時間と共に記憶も風化するため常に災害を意識し続けることは非常に難しい。

 日本の原発保有数はアメリカやフランスに次いで42基と世界で3番目である。しかし、原子力発電の依存が最も高いのは欧州連合(EU)25%であり、その中でもフランスは国内電力の75%を原子力発電に依存している。2015年に施行したエネルギー転換法において、2035年までに原子力発電への依存を75%から50%に減少させる方針であるが、未だにフランス政府から廃炉に関する発表はない。

 このように世界で最も原子力発電に依存するフランスで私は現在、臨床工学技士として災害医療と生命維持管理治療について学んでいる。臨床工学技士とは、人工呼吸器や透析機器など、生命に関わる医療機器の整備や管理を行う職種である。

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