『中國京劇』の表紙を飾った話題作――『陳廷敬』(2月号)、『手鏡』(8月号)、『貞観盛事』(10月号)、『四郎探母』(11月号)

 2018年の『中國京劇』(中華人民共和国文化和旅游部主管 全国中文核心期刊)が特集した演目の舞台を思い描きながら、昨年の京劇界の動向を振り返ってみた。これまで指摘しておいたように、『陳廷敬』(2月号)、『手鏡』(8月号)、『貞觀盛事』(10月号)といった「清官戯」――民衆のために諸悪を懲らしめ、皇帝までも諌める正義廉直の官吏(清官)を称える――が多く取り上げられている点を考えるなら、2018年の京劇界は例年とは違った1年であったように思う。

 ところが、2018年11月号を手にして驚いた。新作の「清官戯」を称揚するといったレベルを遥かに超えていた。

特集された問題作『四郎探母』

 特集として取り上げられている『四郎探母』は、伝統演目ながら、共産党政権成立以前から上演禁止措置を受け、共産党政権下では社会主義道徳に反する「壊戯(劣悪な京劇)」と断罪され自由な上演が許されず、毛沢東から「漢奸(売国奴)だろう」と否定された人物を主人公とする、いわば問題作である。

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