会談に臨む安倍、プーチン両首脳(C)AFP=時事

 

 昨今、日露の領土問題の進展に関する期待が再び高まっている。そのきっかけは、昨年9月にウラジーミル・プーチン大統領が提案した「前提条件なしの平和条約締結」であり、これ以降、日露首脳はほぼ1カ月に1回という極めて早いペースで会談を重ねてきた。

 特に1月22日にロシアの首都モスクワで実施された日露首脳会談の前後には、日露のマスコミが連日のように領土交渉を取り上げるという状況が続いており、ちょっとした北方領土ブームのような趣がある。

 しかし、世論の関心は別として、交渉それ自体は果たして進展していると言えるのだろうか。後述するように、領土問題に関するロシア政府の態度が日本側の期待に反比例するかのように強硬さを増しているほか、ロシア国内でもナショナリスティックな反発の高まりが報じられており、交渉の先行きは容易とは言えない。

 こうした中で、交渉はどこへ向けて進んでおり、着地点はどのあたりになりそうなのか。これが本稿のテーマである。

「BMD」システムに喩えて

 このようなテーマについて論じる場合、もっともオーソドックスなのは、日露の交渉担当者やその周辺から交渉の動向を探るというジャーナリズムの手法であろう。ただ、ここには希望的観測やディスインフォメーションが混入するのが常であるし、本当に重要な情報が常に公表ないしリークされるとは限らない。

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