非常に示唆に富んだ「IEA」のレポート(HPより)

 

 筆者が香港大学留学中に生まれた長男が、香港をベースに仕事をするようになったこともあり、昨年11月、香港を再訪した。前回訪れたのはイラン在勤中の1996年で、1842年以来英国の植民地だった香港が中国へ返還される1年前のことだった。今回の訪問はそれ以来だから、22年ぶりということになる。

 当然のことだが、香港は大きく様変わりしていた。

 変化の主因は、シンガポール建国の父・リー・クアンユーの次の一言が象徴的にも、実質的にも、的確に表現している。

「20世紀最大の発明は『エアコン』である」

 リー・クアンユーのこの指摘は、自然環境がもっと過酷な中東湾岸諸国にもあてはまる。

「エアコン」に代表される技術の進歩により、従前には人間が住むのに適当ではなかった自然環境のところにも多くの人が住めるようになり、複雑な経済活動を行うことも可能となった。その事実は、端的には人口増として表れている。

 一例として、サウジアラビア(以下、サウジ)の首都リヤドを見てみよう。

 日本人として初めてリヤドを訪問したのは、昭和14(1939)年3月、駐エジプト初代公使横山正幸氏の一行だった。サウジ建国7年目のことである。当時、カイロの公使館に勤務していた商工省技師三土知芳氏とカイロ大学アラビア語留学生上がりの中野英治郎氏、さらに公使従僕1人が同行した。中野氏は『アラビア紀行』(昭和16年、明治書房)と題して未知の国・サウジの見聞録を残した。当然のことながら、外交機密に属するため、石油利権等に関するサウジ政府との協議内容等はいっさい書かれていない。往路およびリヤド滞在中に見聞きしたサウジの実態についての旅行記であるが、当時の現地の実情がよくわかる名著である。

記事全文を印刷するには、会員登録が必要になります。