和やかに、しかし熱い対話を続ける細谷雄一さん(左)と篠田英朗さん(撮影・広瀬達郎、以下同)

 

篠田英朗:細谷さんが込めたメッセージはいろいろあると思うんですが、私自身の関心から言うと、閉塞感の原因は相変わらず右の人と左の人が闘っていて、ただその折々で新しい題材とか新しい用語を使っているだけという構図なんですね。たとえばPKO法が安保法制に変わったりしているだけ、といった具合に。

 細谷さんの別の本(『安保論争』ちくま新書)では、書き出しがPKO法と『朝日新聞』の話から始まっているんですが、実はこれは今の話ではなく昔の話ですけどと、ちょっといたずら心のある書き方をされていますけれども、結局は同じ構図の中に新しい言葉だけを当てはめてやっている。でも構図そのものは何も変わっていないということが、閉塞感を感じる大きな原因なんです。

 じゃあ閉塞感を感じる君たちは何なんだ、と言われると、一言で言うのは難しいんですが、なるべく簡単な言葉で自分の立場を表現しなければいけないと思って、私は「国際主義」という、憲法のことも意識した言葉を使って、自分の言いたいことを表現しようとしています。すると細谷さんもこの本で、国際主義が日本にはちょっと欠落している、と言う。でも何もなかったわけではなく、むしろ不当に評価されているだけで、ちゃんと重要な役割を演じてきたということが、すごく豊富な資料とともにメッセージとしてわかりやすく出てきている。明白なメッセージと、それを裏づける十分な情報量が、すごくバランスがとれた形で出てきているすばらしい本だと思います。

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