オーストリアのクルツ首相(右)と極右・自由党のシュトラーヒェ党首。クルツ首相は極右政党を懐柔できるのか (C)EPA=時事

 

 ヨーロッパの保守陣営にとり、オーストリアのセバスティアン・クルツ首相は注目の的だ。ヨーロッパの保守はどこも混迷の最中にある。原因は言うまでもない、近年の極右政党の躍進だ。保守政党はどこも、極右という右からの脅威にさらされており、有権者をいかにつなぎとめるかがその最大の課題だ。

 こうなった直接の原因は、2015年の難民危機である。この時以来、難民受け入れに寛容な姿勢を見せることは許されなくなった。ドイツのメルケル政権を引き合いに出すまでもなく、寛容政策を掲げればたちどころに国民にそっぽを向かれる。人々はそれほどまでに難民の流入を恐れ、治安の悪化や伝統の毀損に敏感になっている。むろん、背景にはヨーロパ各国に広がる「不安」がある。

 ヨーロッパの人々は一様に不安にさらされている。それが、経済的理由によるのか、グローバル化やデジタル化といった社会変化によるのか、あるいはエスタブリッシュメントに対する反感なのか、その原因はひとまず置くとして、人々に不気味に忍び寄る不安が、難民危機で一気に表面化した。今や保守政党はどこも、難民問題をどう扱うかで、党の将来が左右されるほどの危うい状況に立ち至っている。

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