約3年ぶり、日本“だけ”を訪問したメルケル独首相の真意は…… (C)時事

 

 ドイツのアンゲラ・メルケル首相が2月4日、来日した。約3年ぶりであるのに、メディアではそれほど重要視していないような報道が目立った。だが、日独は今、かつてないほど共通の課題に直面している。

 第1に、自国第1主義による保護主義の脅威だ。

 これまで自由貿易の繁栄を謳歌してきた世界経済は、ここにきて急に保護主義の脅威にさらされている。戦後、自由貿易体制の受益国として、その恩恵を最大限に享受してきた日独にとり、この変化は是が非でも止めなければならない。両国にとり、何よりの利益は、自由で開かれた、ルールに基づいた国際秩序だ。両国は協力してこの重要性を訴えていく必要がある。2月1日に発効した日本とEU(欧州連合)の経済連携協定は、日独による自由貿易体制堅持の決意表明だ。メルケル首相は、協定の発効が「世界への重要なシグナルである」と述べた。

ポピュリズムの嵐

 第2は、不安定化が増す世界情勢だ。

 ドイツを取り巻く現下の情勢は厳しい。EUからは英国が離脱を決めたものの、離脱交渉は難航、今や合意なき離脱のシナリオも聞かれる。そうなった場合、大きな混乱が生じるのは必至だ。ポピュリズムの嵐は各国に吹き荒れ、イタリアなどEUの主要国でさえポピュリストが政権を握る例が珍しくなくなった。そのポピュリストは、一様に反EUだ。5月に予定される欧州議会選挙が、近年まれに見るほどの注目を集めるのは、この選挙が中道勢力対ポピュリスト勢力の決戦場になると見られているからだ。

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