お気に入りの小説やマンガが映画化されると聞くと、「やめておけばいいのに……」と思うことは少なくない。原作に対する愛着が深いほど、「汚される」という懸念が強まるからだ。

 これまで、「映画化なんてムチャはよせ」と思った筆頭格は、小説ではアゴタ・クリストフの『悪童日記』、マンガでは業田良家(ごうだよしいえ)の『自虐の詩』だ。前者は劇場に足を運んで「まあ、こんなもんだよな」と達観し、「無かったこと」として処理したが、後者はどうにも見る勇気が起きず、未見のままだ。

「もうダメ」ってなる

 業田の代表作『自虐の詩』は、「泣ける4コマストーリー漫画」の代名詞的存在だ。

 手元の竹書房の文庫版上巻に収められたインタビューで、漫画家・内田春菊は何度読んでもラストに差し掛かると「『もうだめ』ってなっちゃって最後まで泣きっぱなし」と語っている。白状すると、私も再読するたびに「熊本さん」が出てくるあたりから「泣き笑いモード」になってしまう。しかも、これは内田もインタビューで指摘していることなのだが、年齢を重ねるごとに「泣きポイント」が増えているのだ。

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