実験は2月23日から(村上さん提供、以下同)

 

 極地では日本的な言語体系から生まれてくる発想が人を救うのではないか――。その仮説を検証するため、MDRS基地での2週間の模擬実験に「チームアジア」で臨んだ村上祐資(40)さん。

 だが、実験も半ばの8日目、トラブルが起きた。

タンクに白いロウのようなもの

問題が発覚したタンク

「水を保管していた屋外のタンクに白いロウのようなものが浮いていると分かったのです。しかも、その水を2日間、気づかずに飲んでいた。体の不調を訴えるクルーはいませんでしたが、地球側に報告したところ、その水は飲まないようにと言われ、補給が来ることになった。ただ、補給するにもタンクが汚染され、タンクを洗うにも宇宙服を着なければならず、宇宙服を着た状態ではタンクの中に入れない。タンクを室内に移動させるスペースもない。地球側は、後のことは僕らに任せるということでした」

 重苦しい空気の中で、ミーティングがはじまった。

「チームアジア」には初参加の19歳もいた

「検査をして白いものが何なのか突き止めたらどうかと言うクルーもいましたが、基地でできる検査には限界がある。きちんと調べるには地球側にサンプルを送るしかなく、結果を待っている間に飲み水が尽きてしまう。結局、タンクの水を飲むか、飲まないかの2択なのです。実際に水を飲んでも問題がなかったのだから、このままミッションを続けたい、というのがみんなの本音でした。実際の火星ミッションなら、どんな水でも飲むしかないのだから、ここで飲むのが本当の模擬実験ではないか、という思いもあった。けれど、クルーの健康管理を担うHSO(ヘルス&セーフティ・オフィサー)は立場上、安全が確認されていない水を飲んでもいいとは言えないし、その立ち位置からブレないでいてくれた」

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