複雑化する伊仏間の対立。「不安の種」はイタリア・ポピュリスト連立政権にある。左からサルヴィーニ伊内相兼副首相、マクロン仏大統領、ディ・マイオ伊副首相 (C)AFP=時事

 

 世界中で人心が揺らいでいる。

 ヨーロッパでは、フランス・イタリア関係がますます複雑になってきた。仏伊間の摩擦は、2月7日にはクリスチャン・マセ駐伊仏大使が本国に召還されるまでにエスカレートした。マセ大使は2011年から14年にかけて駐日大使を務めた日本にも深い縁のある外交官だ。幸い、15日には同大使は帰任したが、仏伊関係は依然として波乱含みだ。

仏伊摩擦の背景

 ことの直接的な発端は、このところエスカレートしていた両国の首脳間の舌戦である。

 これまで、多数の難民を乗せてリビアを出港し、地中海沿岸で立ち往生した難民救助船の受け入れをイタリアは幾度も拒否してきた。そのことをフランスは度々批判してきた。そして1月19日、伊連立政権内の左派ポピュリスト政党「五つ星運動(M5S)」党首のルイジ・ディ・マイオ副首相が、受け入れを促すフランスを逆に攻撃した。「フランスはアフリカを貧困に陥れ」ており、旧態依然たる「植民地政策」によって移民を(帝国主義的な)ヨーロッパに再統合させようとしている、と厳しく非難した。「アフリカ金融共同体(CFA=フランスの通貨圏)」によって、フランスはかつてと同じように通貨を通して支配している。「アフリカの簒奪」とまで悪しざまに論じた。

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