ブルガリアの象徴、世界遺産の「リラの僧院」(筆者撮影、以下同)

 

 欧州連合(EU)といえば、ドイツのメルケル政権とフランスのマクロン政権との間の連携、英国の離脱騒動、ブリュッセル(ベルギー)を舞台にした政策の駆け引きなど、主要国と欧州委員会の動向ばかりが普段注目を集める。一方で、加盟国でありながら日本のニュースにほとんど登場しない国も少なくない。

 ブルガリアは、後者の典型だろう。島国のキプロスをのぞくとEUの東の端にあたり、欧州内でも話題にのぼることは少ない。加盟28カ国で最も貧しく、繁栄と発展から取り残された感が拭えない。EUの加盟国間の格差を象徴する存在でもある。

 この国を昨年11月に訪れる機会があった。そこで見聞きした現地の様子を報告するとともに、辺境の加盟国から見たEUの姿も紹介したい。

世界で最も激しい人口減少

首都ソフィア中心部のアレクサンダル・ネフスキー寺院

 多くの人にとって、ブルガリアというとヨーグルトとバラ以外思い浮かばないだろう。面積は日本の3分の1足らずの11万平方キロあまり。人口は、東京23区にも満たない700万人程度である。7世紀以降2度にわたってブルガリア帝国の繁栄を築き、バルカン半島からドナウ川流域にかけての広範囲を支配したが、14世紀末以降は500年近くオスマン帝国の支配下に入り衰退した。1908年に王国として独立を宣言した後も、第1次大戦、第2次大戦ともに敗北し、冷戦期は共産主義陣営に属して「ソ連の忠実な衛星国」の地位に甘んじた。ベルリンの壁崩壊に伴って民主化し、2004年北大西洋条約機構(NATO)に、2007年EUに加盟した。

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