タイ「ウボンラット王女」擁立劇の「2つの謎」

執筆者:樋泉克夫2019年2月26日
「王女擁立」の発表に激震が走った(C)EPA=時事

 

 タイは「なんでもあり」と形容されるが、2月8日にマハ・ワチュラロンコン国王の実姉に当たるウボンラット王女がタクシン系の「国家維持党」の要請を受け、同党が推薦する唯一の首相候補に名乗りをあげたニュースには、さすがに驚かざるを得なかった。

 タイでは、各政党が首相候補を掲げて総選挙に臨む。それというのも、現行憲法では下院議員でなくとも首相に就任できると規定されているからだ。つまり熾烈な選挙戦を戦わずとも“落下傘”のように国会に降り立つことが可能なのである。

 現に今回の総選挙でも、2月15日の中央選挙管理委員会最終発表によれば、44の政党が68人の首相候補を挙げている。プラユット・チャンオチャ暫定首相をトップとする軍政当局のダミーとも言える「国民国家の力党」は、当然のようにプラユット暫定首相を唯一の首相候補として推薦している。

“対抗馬”も“大穴”もなく、プラユット暫定首相が“鉄板”であった首相レースに、社交界の花形スターとも言えるウボンラット王女が突如として名乗りを上げたのだから、軍政当局のみならず世論の反応は“びっくり仰天”であったに違いない。

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