ミュンヘン安全保障会議で握手をしてみせるメルケル独首相とペンス米副大統領だが…… 
(C)AFP=時事

 

 ミュンヘン安全保障会議――。この半世紀以上にわたり続けられてきた安全保障の最も権威ある会議は、その都度、世界が抱える喫緊の課題を映し出してきた。2003年、イラク戦争を巡る切迫した状況の中、会議に出席したヨシュカ・フィッシャー独外相(当時)はドナルド・ラムスフェルド米国防長官(同)に対し、「戦争はどうあっても納得できない」と鋭く迫った。2009年には、グルジア(現ジョージア)侵攻に関し、セルゲイ・イワノフ露副首相(当時)はロシアの行動を正当化して見せた。

 では今回、2月15日から17日まで開かれた第55回「ミュンヘン安全保障会議」が浮き彫りにしたのは何だったか。それは紛れもない「米欧の亀裂」である。

波風の立たない日はない

 ドナルド・トランプ米大統領の就任以来、米欧間に波風の立たない日はない。2018年、米国の鉄鋼関税引上げに対し、エマニュエル・マクロン仏大統領とアンゲラ・メルケル独首相は相次いで訪米、トランプ大統領の説得を試みたが、成果なく帰国している。続いて渡米したジャン=クロード・ユンケル欧州委員会委員長がトランプ大統領との間で何とかディールをまとめ、ひとまずこの件は収拾された。むろん、問題は当面収まっただけであり、今また自動車関税の引き上げが取りざたされている。

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