菅野永徳さんと山津見神社=2019年2月2日、飯舘村佐須(筆者提供、以下同)

 

 国内では絶滅したとされるオオカミを、「山の神の使い」と信仰する里が福島県飯舘村にある。

 全国に例を見ないオオカミの天井絵を掲げる山津見神社を要に、全戸の住民が氏子である佐須地区。2011年の東京電力福島第1原子力発電所事故で避難生活を強いられたが、2017年3月末の避難指示解除後、これまでに16戸が帰還し、家を改築して暮らし始めた。避難中に神社は全焼したが、天井絵の復元へ向けて住民と支援者たちが知恵を集める一方、農業や環境を再生する実験でも協働してきた。氏子の結束に新しい交流の歴史を加えて今、内外から人が集う里づくりを目指す。

900余年の信仰に集う

 2019年1月3日朝。国道115号(相馬~福島間)を外れて飯舘村への峠道を越えると、標高約400メートルの山里、佐須地区は真っ白な雪景色の中だった。集落の入り口に 「山津見神社」の大きな石の標柱が立ち、その向こうに地元の名山、虎捕(とらとり)山(705メートル)がそびえている。ふもとの山あいの凍結した参拝路を車でたどった。

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