田尾陽一さんが佐須に建てた家(筆者撮影、以下同)

 

 東京電力福島第1原子力発電所事故から、今日、3月11日で、丸8年となる。

 東京からの支援者として福島県飯舘村佐須の人々に出合い、この日を、住民の1人として迎えた人がいる。

 明日の見えぬ避難生活の中で「帰還、帰農」を決意した農家の訴えに共鳴し、仲間となって8年間、放射線禍の克服に挑んできた。「核」の世界との数奇な運命を背負う科学の人と、開拓者精神を受け継ぐ農家との協働の絆が今、オオカミ信仰の山里再生に新しい可能性を開こうとしている――。

原発事故が変えた運命

 オオカミ信仰の里、飯舘村佐須の山津見神社氏子総代、菅野永徳さん(80)の家の隣に、新しい薄茶色の木造住宅ができた。家主は田尾陽一さん(77)。完成した昨年7月から、佐須の新住民として暮らし始めた。

 東京電力福島第1原子力発電所事故による住民避難指示が解除された翌日の2017年4月1日、自宅がある東京から村に住民票を移したが、地元との関わりは、原発事故から3カ月後の2011年6月にさかのぼる。首都圏を中心に、定年世代の元サラリーマンや主婦、現役・OBの研究者、医師ら多様な仲間と共に支援NPO「ふくしま再生の会」を結成し、佐須を拠点に村の人々と協働して環境、生業、生活基盤の再生に挑んできた。

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