かつて、日本製テレビは世界を席巻したが……(C)時事

 

 21世紀初頭までモノづくりへのこだわりを世界の産業界で最も強く持っていたのは、日本企業だっただろう。より優れた機能を持った製品、消費者をあっと言わせる製品、細部まで気持ちのこもった製品をつくっていたのは日本企業だった。

 だが、中国、韓国、台湾メーカーなどとの競争激化で、日本メーカーは製品での競争よりも、素材、デバイスでの戦いに軸足を踏み換えた。製品が「コモディティ化」すればコストでかなわない、技術進化はもう起きないという言い訳だった。パソコン、薄型テレビ、スマホなど撤退は続いた。

 背中を見せた日本企業に中韓企業が容赦なく襲いかかり、パナソニック、日立製作所、東芝などが別の原因もあったものの巨額赤字に陥った。最後まで製品にこだわったシャープは台湾企業の軍門に降った。だが、今、薄型テレビ、スマホで起きているイノベーションをみれば、諦めた日本製造業の失ったものはあまりに大きかった。

日本企業の出る幕がなくなった「スマホ」

 1990年代、スマホ以前の携帯電話の時代に世界をイノベーションでリードしたのは日本メーカーだった。中でも、日本メーカーの面目躍如は「折りたたみ携帯電話」だった。今見れば他愛ない製品だが、テレビのリモコンのようだった携帯電話をコンパクトに折りたためるようにした富士通、NEC、パナソニックなど日本メーカーの技術は世界を圧倒した。

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