「イノベーション」の気概を捨てた「日本製造業」に復活はあるか

執筆者:後藤康浩 2019年3月20日
エリア: 北米 アジア
かつて、日本製テレビは世界を席巻したが……(C)時事

 

 21世紀初頭までモノづくりへのこだわりを世界の産業界で最も強く持っていたのは、日本企業だっただろう。より優れた機能を持った製品、消費者をあっと言わせる製品、細部まで気持ちのこもった製品をつくっていたのは日本企業だった。

 だが、中国、韓国、台湾メーカーなどとの競争激化で、日本メーカーは製品での競争よりも、素材、デバイスでの戦いに軸足を踏み換えた。製品が「コモディティ化」すればコストでかなわない、技術進化はもう起きないという言い訳だった。パソコン、薄型テレビ、スマホなど撤退は続いた。

フォーサイト最新記事のお知らせを受け取れます。
執筆者プロフィール
後藤康浩(ごとうやすひろ) 亜細亜大学都市創造学部教授、元日本経済新聞論説委員・編集委員。 1958年福岡県生まれ。早稲田大政経学部卒、豪ボンド大MBA修了。1984年日経新聞入社。社会部、国際部、バーレーン支局、欧州総局(ロンドン)駐在、東京本社産業部、中国総局(北京)駐在などを経て、産業部編集委員、論説委員、アジア部長、編集委員などを歴任。2016年4月から現職。産業政策、モノづくり、アジア経済、資源エネルギー問題などを専門とし、大学で教鞭を執る傍ら、テレビ東京系列『未来世紀ジパング』などにも出演していた。現在も幅広いメディアで講演や執筆活動を行うほか、企業の社外取締役なども務めている。著書に『アジア都市の成長戦略』(2018年度「岡倉天心記念賞」受賞/慶應義塾大学出版会)、『ネクスト・アジア』(日本経済新聞出版)、『資源・食糧・エネルギーが変える世界』(日本経済新聞出版)、『アジア力』(日本経済新聞出版)、『強い工場』(日経BP)、『勝つ工場』(日本経済新聞出版)などがある。
  • 24時間
  • 1週間
  • f
back to top