バノン元首席戦略官の「思想」は今後のアメリカをどう動かすのか (C)AFP=時事

 

 ドナルド・トランプ米大統領当選の立役者である元首席戦略官スティーブ・バノンが、3月上旬来日した。2017年8月にホワイトハウスを去った後は、欧州や南米でポピュリズム政治家を支援する運動を続け、今や国境を超えて世界のポピュリズム運動の教祖的な存在となった。

 今回の来日でも、中国という「外からの脅威」と「大衆の救済」いうポピュリズム・メッセージを強烈に発し続けた。世界と米国はどこに向かうのか。その手掛かりとなるバノン思想の「今」を、東京での講演や本人へのインタビューを通して分析したい。

対中国という使命

 バノンの発言を聞くと、今の米国右派ポピュリズム運動がフォーカスする2つの使命が浮かび上がる。

 1つは、中国の世界覇権への対抗だ。これは2016年の大統領選挙の時には、大きく掲げられてはおらず、中国への工場移転がやり玉に挙げられただけだった。もう1つの使命「忘れられた人々の救済」の方は看板公約だったが、その後の3年間で経済、技術、軍事をめぐる中国との競争がいよいよ抜き差しならない状況になった。右派ポピュリズムの核である安全保障上の愛国主義、労働者の職を奪ったという経済ナショナリズムの双方から、中国がもっとも重要な標的となった。

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