英国の繁栄を支えた産業革命について展示するマンチェスターの科学産業博物館(筆者撮影)

 

 欧州連合(EU)からの離脱を巡って、英国が迷走を続けている。メイ政権のもたつきぶりと下院の混乱、世論のまとまりのなさは目を覆うばかりで、EU側から冷ややかな視線を浴びるばかりである。「英国」というかつての名ブランドは地に落ちた感がある。

 何がこのような事態を引き起こしたのか、冷静に考えると得るものが乏しい離脱への道を英国にひた走らせたのは何か。

社会学視点で再検証

 これらの問いに対し、「離脱派のポピュリストが人々の不安をあおった」「権限がEUに次々と移る中で主権を回復する意識が強まった」など、政治経済的な視点に基づく解説は枚挙にいとまがない。ここでは、あまり広く紹介されなかった社会学的な視点を中心に、問題を再検証してみたい。いくつかの調査が示す英国社会の実像は、英政界やメディアでの論議から見える姿と多少異なるからである。

 離脱決定に至った背景には、欧州統合に対する英国の複雑な意識が横たわっている。西イングランド大学(UWE)准教授の社会学者グラハム・テイラーは、その著書『ブレグジット理解のために』(2017年、未邦訳)で、英国の歩みを次の4つの段階にわけて分析している。

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