エイドリアン・ファヴェルは著書『ユーロスターとユーロシティー』の中で、フランスの第4の都市はロンドンだという(筆者撮影)

 

 前回に続き、西イングランド大学(UWE)准教授の社会学者グラハム・テイラーの著書『ブレグジット理解のために』(2017年、未邦訳)の分類に沿って、英国が欧州連合(EU)離脱に行き着く道のりをしばらく検証したい。同書は、欧州統合にからむ英国の戦後史を、1.ポスト帝国の危機、2.英国経済の金融化と脱工業化、3.アイデンティティー・クライシス、4.政党政治の揺らぎ、の4段階に分類している。

3.アイデンティティー・クライシス

 唐突ではあるが、クイズを1つ。フランス人の人口が最も多い街は当然ながらパリであり、マルセイユ、リヨン(都市人口順)と続くが、では第4の都市はどこか。

 通常なら、エアバスの製造拠点がある仏南西部トゥールーズだと、多くの人が答えるだろう。その次は世界的な保養地ニースである。

 しかし、欧州統合に伴って国外に移住した若者たちのライフスタイルを描いて話題となったエイドリアン・ファヴェル著『ユーロスターとユーロシティー』(2008年、未邦訳)によると、フランス第4の都市はロンドンの可能性があるという。

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