色丹での、イワノフ大統領特別代表の会見を伝える国後の新聞『ナ・ルベジェー(国境で)』(筆者提供)

 

 今年1月から本格化した日露平和条約交渉は、ロシア側の強硬姿勢で早くも挫折しつつある。

 ロシアのメディア『RBK』は3月12日、クレムリンに近い筋の話として、「ロシア政府には日本に島を引き渡す計画はない」と報じた。ウラジーミル・プーチン大統領も3月14日、財界人との非公開会議で、平和条約交渉は「失速した」と述べ、「まず日本が日米安保条約から離脱しなければならない」と強調したと報じられた。日米安保条約破棄を交渉の条件にするなら、妥結の可能性はあり得ない。

 交渉難航の中、日本側司令塔の今井尚哉総理首席秘書官は、「もう安倍総理の任期中に北方領土問題は解決できない」と弱音を吐いたと伝えられた。(『文藝春秋』2019年4月号)

 ロシア側が返還拒否に転じたことは、1956年の日ソ共同宣言で引き渡し対象となる色丹島の開発重視姿勢を見れば分かる。筆者は国後島で週2回発行される地元紙『ナ・ルベジェー(国境で)』を有料で購読しており、同紙が伝える色丹の状況からロシアの本音を探った。

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