「時代の変化」を物語った「タイ総選挙」バンコク現地レポート
2019年4月1日
3月24日、タイでは2011年以来8年ぶりとなる総選挙が実施された。2014年のクーデターから5年の長きにわたったプラユット・チャンオチャ暫定首相の“続投”を認めるか否か――言い換えるならクーデターに決起し、国王によって認められた暫定政権の国家運営を民意がどのように評価するのか――に唯一最大の争点があったはずだ。
クーデターによる政権交代が常態化しているタイにおいては、一般には1年前後の暫定期間を経て民政移管を期す総選挙が実施されてきた。その際、クーデターによって活動を禁止されていた政党が再編され、国軍寄りの政治家が新たな政党を組織する。この新党が主軸になって、民政移管後も国軍主体の連立政権が維持される――今回もまた、この“通例”に従って総選挙を迎えたのである。
今回のプラユット暫定政権は過去のそれとは違って、暫定期間が異例な形で長期に及んだ点に大きな特徴がある。その最大の要因は、軍事政権の背景となる既得権益層の「A(王室)・B(官僚)・C(財界)・M(国軍)複合体」を軸とするこれまでの“国のかたち”を拒否し、飽くまでも自前政権による国家運営を目指してきたタクシン派の存在にあったと言える。
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