南海トラフ大地震の被害予測では、自衛隊の現定数では対処できない(写真は東日本大震災での陸自部隊)(C)時事

 

 安倍晋三首相が2月に行われた自民党大会で発言した「憲法加憲・改正が自衛官募集を好転させる」という主張は、「徴兵」を念頭に置かない限り、「自衛官募集は対象年齢層・雇用などの人口動態に左右される」のであって、理屈に合わない。むしろ、安倍首相の経済政策が功を奏すれば、就職が一般企業に殺到し、「命懸けの仕事で肉体的・精神的に厳しい自衛隊が敬遠される」から、ますます募集難に陥るだろう。

 また、「地方自治体の6割以上が自衛官募集に非協力的だ」とも主張したが、政令で「自衛官募集協力業務を定められている地方自治体と自衛隊地方協力本部との関係」は実に良好であって、非難は的を射ていない。

 国の危機管理にとって、自衛隊に限らず、警察・消防・海保などの基幹要員だけで国民を救うことは至難である。大災害が予見されている時期に、これまで提供された内外の「善意の力」に示唆を得、新たな施策として「救難・復旧要員の制度化」を提案したい。

深刻になる「要員不足」

 3.11東日本大震災時に出動した陸上自衛隊(以下「陸自」)7万人は、陸自現在員約13万5700人(2017年度定数15万863人:防衛予算の制約で充足率90%程度は常態)の約半数であった。生死を分かつ72時間に集中する救助活動は、交代制で連続して行われる。従って現場の実働は、派遣数の半分以下になる。

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